プロジェクトはまず、「HITOTEMA」谷尻直子氏と「菓子屋ここのつ茶寮」溝口実穂氏へのヒアリングから始まった。食や日本の四季に対する二人の原体験のひとつひとつがこのプロジェクトの核となる。驚くことに、別々に話を聞いたふたりの想いには８つもの共通点が見つかった。「彩り豊かな日本の巡りにふと立ち止まれるような、余白に満ちた甘いきっかけと、心からだよろこぶ充足を一人でも多くの人に」彼女らの想いを抽出、整理し、ブランドコンセプトの構想を開始した。

わたしたちは時折懸命すぎて 立ち止まることも忘れてしまう。 疲れてしまうときもある。 けれど、ふと目を向ければいつも 四季の恵みがそこにある。 意気揚々と柔らかな春の 足元に芽吹いた小さな蕾。 灼熱の日向に息まく夏の みずみずしい蜃気楼のきらめき。 気づけばそっと寄り添う秋の 落ち葉の絨毯を踏みしめる安寧。 澄んだ空。しんと冷える冬の 遠く山々に沈む夕日の茜色。 そんな日本の四季のよろこびに ふと立ち止まるきっかけの菓子があったなら。 自分や大切な人の心に余白を灯し、 心もからだも元気づける やさしい菓子があったなら。 足を運ばずとも呼べば歩み寄る 一口の鮮やかな時間とよろこび。 移りゆく一対のチーズケーキ。

コンセプトとともに「一対」というネーミングを構想した。二人の真っ直ぐな思いが並ぶチーズケーキの様子が脳裏に描かれた。名前は即決し、ロゴデザインは書家の中塚翠涛氏に依頼。同時にパッケージの方針もはっきりと見えたのがこの瞬間だった。

「味噌クラストのベイクドチーズケーキ」 福井県産の有機味噌を、米粉ときび砂糖のクラストに混ぜ込んだ。塩味を効かせたクラストが、チーズケーキの甘味とクリーミーさを絶妙に引き立て、チーズと味噌、 二つの発酵食品のマリアージュが堪能できる。 「きな粉クラストのレアチーズケーキ」 香ばしさと食感のアクセントに、北海道産のきな粉を使用。まるで雲の様に真っ白 でなめらかなレアチーズムースと、焙煎されたきな粉の香りのハーモニーが口の中 に広がり、フワフワとザクザクの食感を同時に味わえる。